夜空の星々は、いずれすべて消える――。
それは、遠い未来の話ではなく、今まさに進行している運命です。
宇宙は誕生以来、膨張を続けています。
そしてその速度は、重力の引力を振り切るほどに加速している。
その原動力こそが、「ダークエネルギー」と呼ばれる未知の存在です。
見えない力が、すべてを遠ざけ、星と星のあいだに永遠の沈黙をもたらそうとしているのです。
宇宙を押し広げる“見えない手”
1998年、超新星の観測データから、宇宙の膨張が加速していることが発見されました。
これは、従来の常識を覆す発見でした。
重力が物質を引き寄せるなら、膨張は減速していくはず――
けれども実際は、広がり続ける宇宙がますます速くなっている。
この加速の原因として導き出されたのが「ダークエネルギー」。
その正体はまだ誰も知らず、量子真空のゆらぎ、時空そのものの性質、あるいは、宇宙の外側から滲み出す力かもしれないとさえ言われています。

すべてが遠ざかる未来
このまま膨張が続けば、銀河同士は互いに離れすぎ、やがて夜空にはひとつの銀河しか見えなくなるでしょう。
星々は燃え尽き、白色矮星が冷え、ブラックホールさえ蒸発して消える――。
それは「熱的死(Heat Death)」と呼ばれる宇宙の最終段階。
エネルギーの流れが止まり、時間そのものが意味を失う世界です。
私たちはいま、その始まりの黄昏を生きているのかもしれません。

それでも“終わり”とは限らない
しかし、一部の理論では、この暗黒の未来に新たな夜明けが潜んでいるといいます。
宇宙が極端に膨張した後、エネルギーの不均衡が再び「ビッグバウンス(再膨張)」を起こし、
新たな宇宙が誕生する――という仮説です。
終わりは、始まりの形を変えたもの。
黄昏の向こうには、次の光の種が息づいているのかもしれません。

永遠に続く“静かな対話”
宇宙が沈黙に包まれても、私たちが見上げたその瞬間の光は、永遠に時空を漂い続ける。
数百億年後、誰もいなくなった宇宙の片隅で、光の粒が過去の記憶を運び、誰かの目に届くかもしれません。
――終わりゆく宇宙を見つめることは、同時に生きるという奇跡を再確認する行為なのです。

