タマム・シュッド事件|“詩の切れ端”が示した完璧な沈黙

タマム・シュッド事件|“詩の切れ端”が示した完璧な沈黙

1948年12月1日、オーストラリア・アデレード近郊のソマートン・ビーチで、身元不明の男性遺体が発見されました。

彼のポケットから見つかったのは、「Tamám Shud(終わりだ)」と記された紙片。

この謎めいた言葉は、世界的に有名な未解決事件の象徴となりました。

暗号、毒物、自殺説、スパイ活動――数々の仮説が飛び交い、70年以上経った今も真相は不明です。

ALTERIAは今回、この“完璧な沈黙”に包まれた事件を、当時の状況と最新の科学捜査を手がかりに掘り下げます。

目次

浜に横たわる男の謎

1948年の早朝、浜辺で背広姿の男性が死亡しているのが発見されました。

奇妙なことに、身元を示す所持品は一切なく、服のラベルも切り取られていたのです。

遺体は争った形跡もなく、体内からは不明な物質が検出されましたが、毒物の種類は特定されませんでした。

当時の検視官は「毒殺の可能性が高い」と結論づけましたが、証拠は曖昧なままでした。

「タマム・シュッド」という詩の断片

男性のズボンの小さなポケットから発見された紙片には「Tamám Shud」と印字されていました。

これはペルシャの詩集『ルバイヤート』に登場する言葉で、「終わりだ」を意味します。

さらに捜査の過程で、同じ詩集が近隣の車から発見され、その裏表紙には意味不明の暗号のような文字列が書き込まれていました。

この関連性は、事件を単なる自殺ではなく、暗号を伴うスパイ事件とみなす根拠となったのです。

消された身元と残されたスーツケース

発見から数日後、アデレード駅に預けられていたスーツケースが男性の持ち物と判明しました。

しかし、その中の衣類や道具にもラベルはなく、徹底的に身元が消されていたことが分かりました。

スーツケースには縫製の癖や海外製品が含まれており、「彼は外国人スパイだったのではないか」という憶測が強まりました。

一方で、自殺説を支持する者は「自己演出として意図的に痕跡を消した」と解釈しました。

DNA再鑑定がもたらした新展開

21世紀に入り、遺体から採取されたDNAが現代技術で再分析されました。

2022年には、系譜学的手法により男性の身元が「カール・チャップマン」という人物である可能性が浮上しました。

彼は電気技師であり、軍や諜報と直接の関係は確認されていません。

しかし、なぜ身元を隠す必要があったのか、なぜ「終わりだ」の紙片を携えていたのか

――核心は依然として謎のままです。

“終わり”を語る事件の未完の物語

ソマートン・マン事件は、暗号、スパイ、毒殺、自殺といったあらゆる可能性を内包しながら、70年以上も「沈黙」を守り続けています。

DNA解析によって個人名が浮かんでも、事件の真相が解き明かされたとは言えません。

ALTERIAはこう考えます

――「Tamám Shud(終わりだ)」という言葉は、事件の終結ではなく、人類が謎に挑み続ける物語の始まりを象徴しているのではないかと。

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